真魚八重子 アヌトパンナ・アニルッダ

いまさら?という話題を書きます。

以下、10年前に書いた『歓びの喘ぎ 処女を襲う』の再録です。

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そういえば、ここに書いてなかったけど、暫く前に『歓びの喘ぎ 処女を襲う』(高橋伴明)を劇場で観たり。産業排水に汚染された魚を意図的に食べる漁民が出てくるピンク映画。主役のチンピラ青年(下元史朗)が、故郷に帰って自分も漁師の父と同じく、汚染された魚を食べるというエンディングで、抗議の捨て身という殻にくるまれつつ、実際には逃亡と後ろ向きな自殺のお話だと思う。
政治的な意図を読み取れるテーマゆえに、過剰に反応しているピンクファンを見るけれど、決してそういう政治的映画ではない、死の動機付けを見つける自滅的な青年の物語の印象。別にダメと言う意味ではまったくなくて、変に政治的メッセージを読み取って過大評価するより、そういう弱者の立場の中で、そこにまっとうな死の理由をでっち上げて、実際にはただ陰鬱な精神状態にケリをつける青年の話で十分じゃないかと。それとやはり顕著な、愛する者を「殺してやる」という発想。死によって苦痛から解放してやることが、愛情表現として理解されている世界。
下元史朗という俳優さんの、容姿あっての映画。痩身で、しなやかで、破滅的な雰囲気を湛えた姿が、この映画に複雑な美しさをもたらしてる。